2016年6月24日金曜日

木賊蒔絵提箱の漆による修理作品

Fさん(女性)は一昨年の秋から博多漆芸研究所で学び始めました。

主に、ご自宅にある漆塗りものの修理を続けています。



この沈金(ちんきん)の重箱の蓋は、塗りの剥がれや欠け、割れを丁寧に修理し、

直した塗りの仕上げには、銀梨子地粉(ぎんなしじふん)を蒔き、

梨子地(なしじ)塗りにしました。

(梨子地塗りとは、蒔絵の地の仕上げ方の一つです。
この方法で隙間なく梨子地粉を蒔き詰めると、
梨の皮に似るところからこの名がつけられています。
今回は、ぼかすように蒔いています。)


それと同時に行っていたのが、下の木賊(とくさ)の蒔絵提箱の扉の修理でした。

梨子地塗部分は塗りの剥がれ、裏は板の継ぎ目に亀裂が入っていました。




まずは亀裂を直し、表の剥がれ部分の除去、

場合によっては下地で埋め、

塗りを重ねて、整ったところで、銀梨子地粉(元の粉の大きさを見極めて)を蒔き、

梨子地漆を塗ったところ…、なぜか乾きが悪く、

昨年11月の作品展の出品を泣く泣く諦めました。

もう一度、梨子地粉から蒔き直し、上塗り、上塗り研ぎ、磨きを重ねやっと完成しました!!




何が難しかったかというと、すべての工程を、

木賊の蒔絵部分を外して行わなければならなかったところです。

なぜなら、古い物なので下手にマスキングの類を使用すると、問題がおきそうだったからです。


身の方も部分的に、剥がれ、割れがありましたのでこれも直しました。


途中めげそうになるようなシチュエーションもありましたが、

根気よく丁寧に仕上げた結果、

きれいに直すことができました。

これで孫の代まで大丈夫!!

そうそう、接着も、もちろん漆を使いましたよ。